社協だより№144  2  「福祉」への想い ~福祉作文コンクール受賞者決定~  このコンクールは、児童・生徒が日常や学校生活の中で「福祉」について考え、体験したことを作文に表現し、多くのかたがたに伝えることを目的としています。  受賞者の表彰式は、11月14日の「ふくしのつどい」で行われ、また、受賞者を代表して最優秀賞を受賞した黒瀬羽那さんが作文を朗読しました。(受賞者は3ページ)  黒瀬さんは、「作文にした体験は実際に自分の目で見たからこそ、深く心に残り、人と人との関わりの大切さを感じることができた」と話していました。  受賞者の皆さんおめでとうございます! 最優秀賞作文 『津波の被災地、岩手を訪れて』 多賀中学校2年 黒瀬 羽那(くろせ はな)さん  その木は、天に向かって手を伸ばすように立っていた。岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」と呼ばれるその木は、約七万本の松並木の一木であった。東日本大震災の津波で、その一本の松のみが耐えて残った。その松の近くには、窓が無く、校舎のコンクリート部分のみが残った、異様な姿の「気仙中学校」が建っている。  この夏、父と岩手県沿岸を巡る旅に来ている。岩手県沿岸はリアス式海岸のため、湾が多く、漁港がたくさんつくられている。その漁港ごとにクレーンやトラック等の重機が集まっていて、復興のための工事が行われている。目的地である大船渡市の三陸町の沿岸には、見上げるような防潮堤がずっと続いていた。  父が学生時代にお世話になった地元の方の家に泊まらせていただき、津波があった当時の話をたくさん聞かせていただいた。  三陸町では、十一人の方が津波で亡くなったとのことだ。その内の一人は、父と同じ大学の女子生徒だったらしい。彼女は車いすに乗った高齢の女性を助けている途中に津波に襲われて、行方不明となってしまった。  また、三陸町にある診療所の先生は津波から逃げる際に、 「若い人から率先して逃げるように!」 と指示を出していたそうだ。  この両者の判断と行動は、とても勇気のあるものだと思う。自分がその状況に遭(あ)ったとしたら、どのような判断をするであろうか。危険を顧みず誰かを助ける行為も、自分が助かるために全力を尽くすことも、どちらも正しい行為であると思う。大事なことは、この教訓を将来に生かすことだ。災害はどこでも、誰の身にも起き得ることだ。だからこの旅で、津波の被害に遭った方の実際の話を聴くことができて、とても良かった。テレビを通して映像を見たり、インタビューを聞いたりしても、どこか遠くの場所の話に思えてしまい、なぜか他人事のように感じてしまうものだ。今回、実際に津波の被災地を訪れて、見たり、聴いたりすることで、「もし、自分の身に同じようなことが起こったとしたら」という当事者意識を持つようになったと思う。あるいは、「自分は被災地のために何かできることがあるだろうか」とも思うようになった。  私の名前には、「たくさんの人を助ける者になってほしい」という想いが込められている。もし、自分の周りで災害が起きても、自分の身を守れるような準備をしておき、たくさんの人を助けられる術を身につけておく必要があると思った。 〈原文のまま掲載しています〉