日立市社協だより№164 「福祉」とわたし ~福祉作文コンクール受賞者決定~  私たちが暮らす街にはたくさんの「福祉」があふれています。このコンクールでは、市内に暮らす児童・生徒が日常の中で体験し、感じた「福祉」について、作文として市民の皆さんに伝えることを目的としています。  今年度も、想いが詰まった作文が多数寄せられました。その中から、長山未和(★ルビ★ながやまみわ)さんの「優しさのバトン」が最優秀賞を受賞されました。  受賞者は3ページに掲載しています。受賞者の皆さん、おめでとうございます! …………………………………………※ 作 文 ※………………………………………… 最優秀賞作文 『優しさのバトン』 茨城キリスト教学園中学校 3年 (★ルビ★ながやまみわ) 長山 未和さん  ある日の、学校から帰るときのことでした。見慣れた風景の中、私はバスに揺られていました。バス停でバスが止まります。乗り込んできたのは外国人の四人家族。少し日本語が話せるお父さん、日本語が話せないお母さん。小学校低学年くらいのお兄ちゃんと、一、二歳の女の子でした。お兄ちゃんは、小さい妹が乗るベビーカーを掴(★ルビ★つか)んで立ち、お父さんは娘を抱いて座り、お母さんも空いている席に腰を下ろします。私をはさんで前後の席に座ったお二人は、ずっと話をしていました。どちらかに席を譲(★ルビ★ゆず)ろうか、私はとても迷っていました。と、いうか、譲るべきだということは分かりきっていたのです。しかし、私の体は動きません。そのうち、ご家族が降りるバス停に着きました。お父さんが運賃を払う間、三人は乗車用ドアから出ていいのか、分からないようでした。すると、バスに乗っていた二人の女性の方が、乗車用ドアを指差し、 「こっちから出ていいって!」 と三人に降車を促し、お兄ちゃんと赤ちゃんを抱いたお母さんだけでは危ないと思ったのでしょう、てきぱきとベビーカーを降ろし始めたのです。三人とベビーカーが無事に降りると、運賃を払い終えたお父さんは片言でも「ありがとうございます、ありがとうございます。」 と何度もお礼を言っていました。私は心が動かされました。少しもためらうことなく人を助け、言葉の壁を優しさで軽々と超えて、赤ちゃんに、かわいいねえ、と声をかけ、皆にまぶしい笑顔を向けるお二人を心から尊敬しました。同時に、深く後悔しました。どうして席を譲れなかったのだろう、どうして勇気のなさを席を譲れない言い訳にしたのだろうと。そして、自分の自己中心的な考えに気付き、これからは自分の中の葛藤(★ルビ★かっとう)など超えて動ける人になろうと強く心に決めました。どんな相手に対しても、自分に手伝えることがあれば真っ先に手を差し伸べられる人になりたいです。あのお二人から、境界なく笑顔で手を差し伸べることの大切さを教わりました。これは、動くべきだと分かっていながらも動けなかった私に対しての、次は助けてね、というバトンだったのだと思います。お二人からの笑顔と助け合いのバトンをしっかりと受け継ぎ、今度こそは、恥や勇気の無さなど、自分の心の中にある障害物に足を止めることなく、走り抜けたいです。  あれから数カ月。学校の帰りのバスのステップに整理券が落ちていました。助け合いのバトンを思い出し、今度こそ行動しようと思い、運転手さんに渡すことができました。すると 「ありがとうね。」 のお言葉を頂きました。スタートラインから、少しは走り出せたでしょうか。この調子で、笑顔と助け合いのバトンを握り、思いやりの道を走り続けられるよう、頑張ります! 〈原文のまま掲載しています〉 …………………………………………※ 作 文 ※………………………………………… 令和4年12月5日号 2